「For Global Meiji! 教職員との本音トーク」 第1回 横川綾子 明治大学国際連携機構特任准教授
- 鎌倉 巽
- 2017年12月14日
- 読了時間: 15分
「For Global Meiji! 教職員との本音トーク」
本日から始まるこの連載。
「明治大学国際化の活動を根掘り葉掘り聞き出そう!」
をテーマに、個性豊かな明大教職員の方に本音トークを迫ります!
学生が知りたい裏話が聞けるかも!?
第1回のゲストは、
「横川大先生」こと横川綾子先生に来ていただきました!

鎌倉:こんにちは。じゃんじゃん行くので、本日はよろしくお願いします。
横川先生:学生発信でこういった企画が立ち上がるのは頼もしいですね。さすが明治の学生さんです。よろしくお願いします。
鎌:今回のインタビュー内容は「横川先生のお人柄に迫る」・「明治大学の国際化」・「留学とは」の三本柱で進めさせていただきます。
まずは、「横川先生のお人柄」ですね。
横川先生は上智大学法学部国際法学科を卒業されていますが、どういった経緯で進学したのでしょうか。
横:当時から「国際化」というのは世間で言われていました。中学・高校を超ドメスティックな環境で過ごしたので、大学はちょっと違ったインターナショナルなところに行きたいと思い、上智大学を志望しました。女子校に通っていたんですけど、その学校の子たちはよく勉強するし、当然のように名のある大学に進学するんですね。
鎌:いわゆる日本のThe top of 大学へ進学する生徒が多かったんですね。
横:今もそうですけど、私は反体制派みたいなところがありまして。大方の人が選ぶことは死んでも選びたくないという、あまのじゃく体質なのです。それで当時、周りの子が志望しない大学に行きたいと思っていました。また、大学で勉強するなら中高でやってきた数学・英語・歴史などではなく、新しいことを学びたいと思ったんです。
そんな時に読んだのが、いまの皇太子妃雅子さま、旧姓小和田雅子さんが外交官だったときの手記が載っている雑誌。今でいう「グローバル人材になるには」みたいな内容でした。それを読んだとき、「国際派」という言葉にリアルなあこがれを持ちましたね。小和田さんは女性外交官として華々しく活躍されており、それが高3で進路を決めかねていた自分に刺さったわけです。外交官になるには国家試験があるけど、法学部に行けば外交官のような公務員の道も目指せるし、法律だけでなく国際政治も学べる。自分のやりたいことがオールインワンで叶えられそうだな、と思ったのが、上智大学法学部国際関係法学科だったんですね。
鎌:ありがとうございます。今でも「反体制派」とは言いませんが、「同調して行動」というタイプの教員ではないですよね。とても好きです、僕は。(笑)
晴れて上智大学に合格した後ですが、大学に入ったあとの4年間はどう過ごされましたか。
横:大学生活は地味でしたよ。皆さんがこうやってMuBOを作って活躍されているのが羨ましいくらいでして。(笑)
鎌:そうなんですか??行動的な姿を想像していましたが。
横:上智大学は当時も華やかで、帰国子女が多かったです。私のクラスにも帰国子女がいて、当然のように英語ができるんですね。私は「受験英語叩き上げ組」ですから彼らには一生敵わない、そういうコンプレックスを抱えていました。学業はそこそこ頑張ったけれど、これと言ったものは達成せずに卒業したかな。
鎌:そうだったんですね。意外な一面を発見しました。

明治大学オープンキャパスでの講演
鎌:以前、留学経験はないとお聞きしましたが、大学4年間で海外への渡航経験などはありましたか?
横:全く海外経験がなかったわけではないんです。大学1年生の時にアメリカに3週間ホームステイに行きました。2年生の時には、自分でエアメールを送って手続きし、大学の寮に入りながら付属の語学学校に1ヶ月通い、後の1カ月はアメリカ国内を一人で周遊したりしました。
海外には行っていたものの、単位を伴うような長期留学をしなかったのは私なりの理由がありました。英語だけやりたいなら国内で学べるし、交換留学プログラムにも惹かれるものはあまりなく、留学する必然性がないと思っていたのです。
今だと留学といっても、短期・長期・インターンシップ・海外ボランティアなど様々です。でも私が大学生だった時代は、留学と言えば「休学して自分で業者を手配して行く」、あるいは「大学の交換留学」という選択肢しかなかった。留学に対するハードルは、今よりも明らかに高かったですね。
そう考えたとき、国内で勉強できない学問を修めるために海外に行くのはありだと思いました。でも「英語を上達させたい」とか「海外で生活してみたい」といった、ふわっとした目的だったら時間とお金を費やす必要はないと考えていました。でも後々、これは間違いだったと気付いたんですけどね。今思うと、長期留学は、学生時代にやっておけばよかったと思うことの1つかな。
鎌:なるほど。やはり今とは留学の捉え方や留学プログラムは相当違ったようですね。当時は学問を修めるために留学するなら意味はあるが、英語のためだけなら必要ないと思われていましたが、なぜそれが失敗だったと思うのでしょうか。
横:英語を教える仕事を始めてから、英語圏の生活や文化に対する理解、ネイティブスピーカーとの触れ合いなしに、言語としての英語だけを抜き出して学ぶのには限界があると感じました。そりゃ本で勉強すれば英語の知識は得られるけど、そういうスキルはしょせん机上のもの。英語を使う人の状況や気持ちといったリアリティが伴っていない。感情が動く体験と習得したスキルとが結びついていない。バーチャルな想像ではなく、リアルな体験に結びついた学習が本来あるべき姿だと思います。
でも当時は、英語だけなら国内で学べるじゃない、と安易に思ってしまった。英語力だけ考えても、留学に行かないよりは行った方が絶対に得るものは大きいし、今の学生さんにはぜひその経験をしてほしいと思っています。
鎌:現在はオンラインレッスンや英会話カフェなどがありますが、やはり現地での「リアルな英語に触れる」というのは、語学以外にも多くの収穫はありますよね。当時の状況でも女子学生が海外渡航を積極的にしているというのはなかなか行動力がありますね。さすが横川大先生です。
続いてですが、横川先生の就職活動についてお聞きしたいと思います。どのような経緯で、グローバル人材育成という分野で教員を務めていらっしゃるのですか。
横:この仕事に就いているのが不思議なくらい、学生の時は教員という職業に全く興味がなかった。むしろ先生は嫌いな人種でしたので(笑)、大学教員になるなんてことは少しも考えていなくて。人と関わることは好きだったので、接客を伴う仕事はしていました。英語とはほぼ無縁の仕事でしたけど。英語はずっと好きで、勉強もなんとなく続けていましたが、それで食べていきたいなんて本当に思っていなかった。20代最後の年までは。
29歳で目覚めました。身体を使う仕事をしていたけど、長くは続けられないと思い知りました。女性だと、結婚や出産、育児や夫の転勤だとかでライフスタイルが変わりやすい。でも、手に職があれば何とかやっていけるんじゃないかなと。
20代の頃、ワインのソムリエになろうと思ったこともあるんですよ(笑)。実は父親が生前にお店を経営していたこともあり、自分にもそういう才能があるかもしれない、将来私もお店を持ちたいと考えていました。そういう模索の時期は、興味のおもむくままどんどん突き進んでいた。
でもそうすると、知らない間に無理をする。いきなり倒れたりしたら周りに迷惑がかかるし、積み上げてきた信頼やキャリアを失ってしまうかもしれない。「無理をしてまで働かない」というのはそのときに得た教訓です。それで、いわゆるホワイトカラーの仕事に就こうと思いました。親には大学まで出してもらいましたし、長く続けられるキャリアを築こうと。
じゃあ「知的労働」ってなんだろう。資格があれば食べていけると思って始めた司法書士の勉強も中途半端にしちゃったし、今からでも出来る仕事ってなんだろうって。そこで、英語だったら嫌いじゃないし、頑張れば様になるかなぁと考えたわけです。英語の先生は安定した需要もありますしね。ライフスタイルが変わっても、英語を教える仕事なら一生働き続けられるかもと。
ということに気づいたのが29歳のとき。遅いでしょ(笑)。だから学生さんには28~9歳までふらふらしているのは普通だよ、といつも言っています。最初は自分のパッションや興味で突き進んじゃうこともあるけど、それに心や体がついて行かないときもある。憧れを持って就いた仕事も、実際は想像と違って日々辛いなんてこともある。そういう方向変換って20代まではどんどんやって良いと私は思っています。
鎌:今の横川先生があるのもいろんなことを経験してきてのことなのですね。自分も30歳までやりたいことをやって突き進んでいこうと思います(笑)。こういった経験の中で、今の「英語教師」という天職に就かれたのですね。
鎌倉: さて、ここからは明治大学の国際化についてお聞きしていこうと思います。
明治大学のグローバル人材の育成は、他大学と比べてどのような特徴があるのでしょうか。また、現在進行中のプロジェクトについても教えて下さい。
横川先生:明治大学の一番の特徴はなんといっても「圧倒的な学生数」。
学生のレベルはどんどん上がっていますし、社会的評価も年々高くなっているのは間違いありません。他にも評価が高い大学はあるけれど、「数」という強みは明治の特徴です。
例えば、「グローバル人材ピラミッド」のような階層を想定し、上位層・中位層・下位層があると仮定しましょう。構成は、上位層2割、中位層6割、下位層2割とします。
2割の上位層は、こちらが働きかけなくても海外留学に行く人たちです。
一方、6割の中位層と2割の下位層は、大学主導のサポートがないと、なかなか留学のことは考えません。言い換えると、サポートがあれば留学という選択肢が生まれるが、アプローチがないと行動しない学生が8割を占めるということです。
今、私たちが戦略的に働きかけているのは6割を占める中位層です。もし中位層の半分である3割が留学に目覚めてくれたら、上位層が5割に増える。こんな感じで、グローバル人材ピラミッドの構成を変えていきたいと思っています。中位層を少しでも多く上位層へ持ち上げたいのです。
私が以前勤めていた国立大学の学部生の数は2,000人です。変革を起こすにも、そもそも刺さる層の分母がとても小さいんですね。割合は同じでも、実数としてみるとやっぱり少ない。
でも、明治大学の学生をグローバル人材にしようと思ったら、学部だけで32,000人もいるわけだからすごい話ですよ。そこが他の大学にない明治の強み。数のパワー。もしこれが叶ったら、大変なことになりますよ。私はその「大変なこと」を起こしたい。上位層の2割は自由にやってもらえるよう、邪魔さえしなければ良いんです。それ以外の学生にはこちらから働きかける。
鎌:なるほど。明治大学は数が圧倒的強みなんですね。では、一方で明治大学にまだ足りていない部分はどういったところでしょうか。
横:学生自身の英語力、特に発信力ですかね。
留学の成否に英語力はそれほど関係ないというのはある意味事実。
でも、日本でずっと英語を学んできて、Speakingが苦手な人、Writingの勉強をしたことがない人は、どうしても留学に一歩踏み出せないことが多い。もちろん英語の先生は、工夫を凝らした授業をしてくれています。でも「留学に必要な英語力は留学したい人が自力で頑張ってね」と、自助努力に任せてしまっている部分があるのが現状です。
大学側がいろいろな留学プログラムを用意しても、必要な英語力まで大学が用意してくれるわけではない。それが分かっている上位層の学生は自力でなんとかするけれど、そうではない学生には、実効性のある英語力養成講座やプログラムの整備といったサポートをしなければと思っています。
逆に、この「英語力」という課題が克服されれば、今持っている目標よりも、さらに上の目標を持つ学生が増えるだろうと期待しています。時間はかかりますが、粘り強く、長期スパンで取り組まなくてはいけませんね。
鎌:つまり、中位層や下位層の底上げを行うことが、今の明治大学国際化の方針ということですね。
横:はい。でもそれだけではありません。明治大学では、上位層を超上位層へ持っていくための取り組みも行っています。
例えば、留学の助成金。最大300万円を助成する「明治大学学生海外トップユニバーシティ留学奨励助成金」が新設されました。
www.meiji.ac.jp
海外の一流大学と言われるところで実際に学んで成果を出してくる学生さんを、資金面からサポートする仕組みです。せっかく上位層が増えても、ピラミッドの頭が重くなっていくだけでは、底上げの意味がありません。将来的には、ピラミッドを3層から4層にしたいのです。「上位層は超上位層へどうぞ」と誘導する、上位層の学生もそれを当たり前と思う、そういった野望を持っています。
強みの話に戻ると、助成金は明治大学の大きな強みと言えますね。他の大学と比べても、かなり手厚いですよ。留学したいという明確な目的がある学生は、ぜひ金銭的なサポートをフル活用してほしい。お金がないから留学を諦めるというのは、明治大学にいるならとてももったいないこと。使えるものはすべて使ってほしいです。
鎌:どんなに優秀で意欲があっても、金銭的な理由で留学に行けない、というのはもったいないですからね。さすが明治大学ですね、そのあたりは。
それではここから「留学」についてお聞きいたします。横川先生にとって「留学」の定義や意義とはなんでしょうか。
横:学生の頃は視野が狭く、「学問を極めるためにするのが留学だ。語学を習得するだけなら留学ではない」と思っていました。確かに少し前までは、留学と言うと、単位や学位を取得する長期留学を指すことが当たり前で、語学研修などとは区別していました。でも今は、そんな定義付けにたいした意味はないと思っています。
留学とは、短期も長期も関係なく「留まって学ぶ」ということです。これは単なる行為を示す言葉。何を得るかはその人次第。長期間海外に滞在し、外国語で学問を修めることには大変な苦労が伴うだろうと思います。でも、単位や学位を得る以外にも、海外で暮らす、現地に馴染む、人々と交流する、そのすべてが「留学」でいいのではないでしょうか。
海外では「日本だったらこうなのにどうして?」は通用しません。当たり前がいかに当たり前ではないかを知ることが留学の醍醐味であり、それは日本を出て初めてわかることです。日本にいたら、自分が当たり前だと思っている事自体に気付かないでしょう。それまで当たり前と思ってきたことが全然当たり前じゃない。そう気付いて初めて、「じゃあどうする?」と試行錯誤するんです。それが留学のすべてだと思います。
違いを受け入れることって、国内にいても必要な力です。私の場合、国立大学から私立大学に来たけれど、あらゆることが違いますね。それぞれの場所にそれぞれの当たり前がある。英語に関わってきたおかげで、「当たり前の上書き」が早いかもしれない。違う環境・違う文化に入っても、ここではこうなんだなと、受け入れられることが多いです。
でも中には、違いを柔軟に受け入れられない人もいる。そんな人は、留学を通して当たり前の違いを日々突きつけられると、違いの受け入れが早くなる。違いに遭遇したら、「ほほう。そういう仕様か」と面白がりつつ頭を切り替えられると、自分が楽になります。
国が違えば、人々の行動パターンも違って当たり前。グローバル社会を渡り歩く人は、切り替えが早いです。この能力は、日本を出ることで嫌でも身に付きます。「切り替え力」が備わっていると、大人になってから生きるのが楽ですよ。例えば結婚生活。当たり前の擦り合わせと切り替えがとても大事(笑)。
違いに対する受容性がグローバル化の指標かもしれません。「自分の当たり前は当たり前じゃないんだ」という新鮮な気付きを得ることが、留学の意義だと思います。
鎌:ありがとうございます。様々な経験をされているからこそ説得力のあるお言葉ですね。私自身も2度の留学を経験していますが、横川先生が仰る「自分にとって当たり前じゃないことを受け入れる能力」はだいぶ身につきました。語学だけじゃありませんね、留学の意義は。
それでは最後になりますが、留学に行く前、行った後の学生に対してそれぞれメッセージをいただけますか。
横:これから留学に行く、あるいは留学に否定的な学生へ・・・
まぁ、とりあえず行っていろいろ体験してくればいいんじゃない(笑)?
今の時代、インターネットや動画でバーチャルな知識は得られる。でも、オンラインでは得られない実体験が留学ではたくさん出来る。「体験してくれば?」とカジュアルに言ったのは、今の時代、留学はそんなに特別な事ではないから、構えず、とりあえず行ってみましょう。
留学から帰ってきた学生へ・・・
世界はかつてないほど緊密につながっています。必要な情報も不要な情報も、毎日洪水のように入ってくる。そんな状況の中、自分が短期間でも「外から自国を見た経験」の価値を忘れないでいてほしい。例えば1ヶ月の留学から帰って来てそこから間が空いてしまうと、どうしてもその体験から得た何か、体験から沸き起こった感情や不条理感、なんで世界ってこうなんだろうか、なんで日本ってこうなんだろうかという意識が薄れてきてしまいます。
実際に海外に行く・行かないに関わらず、視野をなるべく広く持ち続けるように。情報のソースを日本語だけでなく英語にも求め、様々な角度から知見を得られるようにしてほしい。英語をもう少しできるようになりたいと思えば、その時に勉強すれば良いのです。
最後にもう一つ。日本はどうしても同調圧力があるけれど、適度にスルーすること。留学を通して、人生観が劇的に変わる体験をして帰って来たのに、新しい自分を押し込めるようなことはしないでほしい。こうあるべきだ・こうしたいんだと思ったら、他人の目は気にしないで行動しよう。自分を受け入れてくれる、自分を育んでいけるような環境を自らつくっていこう。
留学を機に新しくなった自分を大切にしてください。
『New Me!で生きていこう!』
鎌:横川先生、熱いメッセージをありがとうございました。
こういった企画を行って、さらに横川先生を好きになりました。
ここまで読んでいただいた皆様、そしてインタビュー記事作成にあたり、様々な助言をしていただいた横川先生、誠にありがとうございました。
次回はあの教員・職員さんに突撃いたします!乞うご期待!
インタビュアー:鎌倉
編集:中山・間・高取