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外務省で40年以上働いていたグローバルパーソン?!【教職員インタビュー#5】

みなさんこんにちは!MuBOインタビュー企画です。

今回は、外務省で40年以上に渡って外交に携わっていた堀江先生。身近に国際機関で働いた経験を持つ方って少ないですよね。どういう思考や経緯を経て、留学や就職をされたのか…必見ですね!

Profile

堀江 正彦

昭和21年 7月1日生

  44  大阪大学経済学部卒業

  46  米国チューレイン大学大学院

      経済修士課程修了

  48  大阪大学法学部卒業

  50  フランス国家行政学院(ENA)

Prologue

1. 人と人との繋がりを感じながら、外国を知り、違う文化を知った。

  :今に至るまでの先生の歴史。

2. 英語ができても、◯◯できなきゃ通用しない。

  :グローバル人材とは。

堀江先生。後ろの絵は娘さんの描いたもの。お気に入りは真ん中の芋掘りの絵。

1. 人と人との繋がりを感じながら、外国を知り、違う文化を知った。:今に至るまでの先生の歴史。

—海外に関心を持ったきっかけはなんですか?

 中学生のとき、近所にキリスト教の牧師さんがいた。そこでよく「キリスト教を知りたくないですか?僕のところに来てくれたら、イエスキリスト様が苦難の道を歩みながら信者たちに教えをほどこした話が聞けますよ」と言われてね。そこで思った。世界にはいろんな宗教がある、違う宗教も知りたい。僕は日本に生まれて、たまたま仏教の家で育った。近くに牧師さんがいたからキリスト教も知ったけれど、中近東だったらイスラム教だったかもしれない。つまり宗教は生まれた場所で決まることが多い。そして、それぞれの宗教には神様がいる。ところが、キリスト教徒でもイスラム教徒でも宗派によって争っている。宗教には“神様”がそれぞれいて、宗派が違い、文化が違う。そういう世界を、僕は知りたいと思った。

宗教に触れたことがきっかけだったんですね。

 その通り。そのあと入学した高校が、たまたま大阪城の真ん前にあった。歩いたら大手門まで2〜3分で、本丸に行くのには8分くらい。そこにはいろんな国からの観光客がたくさんいて、外国からの観光客とお友達になりたいと思ったわけ。だから、授業が終わると毎日のように大阪城に行った。知っていると思うけど、お城って敵がやって来るのを確認して追い返すための眺めの良い場所がある。そこに陣取って、やって来る観光客を眺めながら「あの人は良さそう、可愛い娘さんも一緒かな」と見さだめる。そうしたら、その人たちに話しかけに行って自己紹介をする。「私は、大手前高校の一年生です。英語をマスターしたいと思っているので、大阪城の案内をさせていただけませんか?」って英語でね。そうすると、だいたい喜んでくれる。それでボランティアとして大阪城の案内をする。

 そのためには、歴史も英語も勉強しないといけない。豊臣秀吉がどのようにして貧農から武士になり、こんなに素晴らしい大阪城を建築したのか。そういう話を記憶して、それを英語で説明できるように練習した。何度もやっているうちにすっかりマスターしたよ。だから高校生活の後半には、立派なガイドができるようになった。外国人観光客にもすごく喜んでもらえて、その人たちと友達になると「今日の案内はとても良かった。明日は大阪の町を観光したいから案内してほしい」と頼まれる。仲良くなった外国人からは、住所をもらって文通を始めることになる。英語で手紙を書くのは大変だったけど、今から思うと趣味と実益を兼ねたことを毎日やって楽しかったな。

—自分で外国人のいる場所に行って、まだ不慣れな英語を使って友達になるなんて行動力に驚きです。今の時代、英語を練習したいと思ったら、大体の人が英会話スクールに申し込むことしか思い浮かばないと思います。私自身、やりたいことがあるけどお金がない、だとか環境のせいにすることがあるので、甘ったれだなと痛感しました…(苦笑)。毎日自分から外国人に話しかけて案内をするって、下手に英会話教室に通うよりも相当英語の練習になりそうですね!

 そう!観光客をハントして案内をしたり、お話したりしてスピーキングの練習もできるし、そのあと手紙を書いて文通してライティングの練習もできる。57年近く経ったけど、今でもその人たちと繋がっているよ。その人たちの子供や孫が日本に遊びに来たときはご馳走してあげたりする。そういった人と人との繋がりを感じながら、外国を知り、違う文化を知る。未だに付き合っているその友人は、アメリカ人やトルコ人など。違う国の人と知り合って、英語で会話をして友達になって世界が広がっていった…それが高校時代。

授業後、先生のラウンジの様子。

—大学時代のお話、ますます気になります。

 高校生の頃にそんなことをしていたから、僕は語学スクールには行ったことがなかったけれど、大学に入った53年ほど前にECCが初めて大阪にスクールを始めた。その校長から2番目にオープンするスクールで「英会話を教えてくれないか?」と頼まれて、社会人相手に英語を教えた。“僕のクラスで教われば数か月で英語が話せるようになる”っていう謳い文句でね。当時は苦学生だったけど、そのバイトは結構な収入になった。

—お給料気になります!

 当時で月8万円くらいだったと思う。50数年前だから、当時の公務員の初任給は月4万円程度。そう考えると月8万円はとてもありがたかった。それを大学時代ずっとやっていたある日、ロータリークラブのフェローシップ(大学院奨学金)というのがあって、学部4年生の時に応募した。ロータリー財団からは「合格!ニューオリンズにあるチューレイン大学に行ってほしい」と言われた。僕の行きたいアメリカ北部の大学とは違ったけれど、南部では有名校だし、財団の奨学金は生活費込みで300万円。ということは、毎晩5時間のバイトをしなくても勉強ができる。これは受けるしかないと思って1年間留学することに決めた。

 これは僕にとってありがたいことだった。そこで、修士号には通常2年間かけるところを、奨学金のでる1年間で取ろうと決心した。アメリカの教育は非常にしっかりしていて、図書館には半個室(キャロル)があってそこで毎晩勉強した。もちろん本はいくらでも借りられる。夜には学生食堂でアメリカ人やコロンビア人の寮友とご飯を食べて、また勉強して、もちろん授業にも行って毎日勉強した。だから1年経った時には、メガネをかけなきゃならなくなっちゃった(笑)。

—ロータリークラブって初めて知りました…なんだか凄そうなところですね。

 ロータリークラブの奨学金は本当に素晴らしい。奨学金を受け取ってもなんの義務もない。ロータリークラブは世界中至るところにあって、この近くでも駿河台ロータリークラブとか神田ロータリークラブとかあると思うけど、メンバーは週1で会合があってゲストスピーカーを招待して話を聞く。財団は、学業が許す範囲でそうしたロータリーの会合に出てランチタイムに20〜30分メンバーに話をしてもらいたい、と要望してきた。これは面白そうだと思って、自分の大学の近くはもちろん、遠くにあるロータリークラブにも訪問したよ。朝6時に起きてグレイハウンド・バスに乗って、11時くらいに目的地に着いてランチタイムにスピーチして帰る。勉強があったからそんなにたくさんは行けなかったけれど、月に1回はどこかのロータリークラブを訪問して、アメリカでの経験や日米関係、日本人のものの考え方などのテーマでスピーチを作ってしっかりと頭に入れてから話す。だから、大学院の勉強もしながら、スピーチもやって、ロータリークラブの人とも仲良くなって、大学も1年間で修士を取ることができた。こういうことをしているうちに、日本と外国との関係を良くしていく職業に就きたいという思いがつのって、帰国して外交官になろうと決めた。外交官試験を受けたところ幸運にも合格!晴れて外務省に入省した。

 中学校ではキリスト教の牧師さんの生徒、高校では大阪城を舞台にした外国人観光客のガイド、大学では英会話スクールの先生をして、アメリカ留学をした後で外務省に入省。世界各国と友好関係を築きたいと思いながら外交官をすること40年以上。その最後の段階では、気候変動の問題や自然環境の保護の問題を担当する地球環境問題担当大使をやって、明治大学に来た。2012年に外務省を退官する時点で明治大学の学長からお誘いがあって、特任教授をすることになったのはたいへんな幸運。特任教授を5年間して定年になり、昨年からは学長特任補佐。大学生の時に将来大学の先生になりたいと思っていたこともあって、外務省に入省してからも辞めたら大学の先生になりたいと思っていたんだ。明治大学って凄いんだよ!もちろん教授も優秀な人が揃っているけど、学生もみんな明るくて熱心で目がキラキラ輝いている。私の周りにも他の大学で教えている友人が結構いるけど、そこの学生たちはスマホばっかりいじっていて私語も多くて、教えていてつまらないって聞くことが多い。だから、明治大学に来てものすごく幸運だったと思う。

—私も、先生の授業を受けることができてとても幸運だと思ってます。

授業の一環として希望者で外務省を訪問。

2.英語ができても、○○できなきゃ通用しない。

:グローバル人材とは。

 ありがとう。明治大学では学部間共通総合講座で、日本の外交や世界情勢の読み方について教えている。君たちは学校で勉強しているけれど、その間にも世界ではいろんなことが起こっている。シリアでは難民が大量に発生したり、身内を殺されたり、紛争があり。そうでなくても、貿易戦争があったり、北朝鮮問題があったり、いろんなことがこの地球上で起こっているよね。そういうことだけじゃなくて、地球温暖化の問題も深刻で我々の子供、未来世代は生きていけるのか懸念されているし、生物多様性も危機に直面していて絶滅の危機に瀕する種もどんどん増えている。動物が死に絶えるってことは、人間もいずれ死ぬということなんだから、それでいいはずはない。

 だから、こういった問題を知らずに卒業するのは良くないと思う。できるだけ多くの学生に世界でどんな問題が起こっているのかを知ってもらいたい。僕の授業ではあえてこういった諸々の問題のイロハというか基礎的なところを教えるようにしている。そうすると、いざシリア難民などの問題を耳にした時にも自分の意見を持てるようになる。イロハが分かっていると全体の動きが見えてくるから、意見を持つことが容易になる。自分の意見を持てば持つほど、個を強くできる。そういうわけで「グローバル人材育成講座」と称した授業をしている。

—なるほど、グローバル人材…最近この言葉よく耳にします。先生にとってどういう能力を持った人材のことをおっしゃっていますか?

 まずは異文化を理解すること。もちろんそのためには日本の文化もきちんと理解していないといけない。自分が生まれた文化や宗教を理解した上で、他の国の人々の宗教や文化を理解する。次に、情報発信力。自分の意見を持ち、発信する。そして説得する必要があるときには、コミュニケーションをするし、質問したい時には質問をする。そうしたことが出来るようになるためには、学校で教わってきたような教養も必要。そして何よりも重要なのは情熱と強靭さ、つまりやる気を持つこと。私はこれをやりたい、という気持ちと、挑戦していく中で壁にぶつかっても挫けずに克服する精神力。それと特に日本人に必要なのは総合的な調整力。ひとつのことに熱中できることも大事だけど、全体を見渡して総合調整する能力も大事だと思う。これらの能力は、放っておいて自然に身につくものではない。だから皆が自分でそれらの能力を身につけようと決断して、努力しながら獲得する必要がある。ときには歯をくいしばって、困難を乗り越える。そういう経験を積むことが学生時代に大切なこと。

—これらの能力を養う授業なので「グローバル人材育成講座」というわけですね。

 僕の授業は学生が手を挙げて、臆さずに自分の意見を言ったり、プレゼンをしたりする道場。「私はMuBOでインタビューをやっています!」とかね。人の前で意見を言う、プレゼンをする、といった練習が日本の教育にはない。だから日本人は意見を言わないといけない場にいても、何も言わないし言えないことが多い。まあ、日本は「沈黙は金」なんて都合の良いことわざがあって、何も言わなくてもなんとかなる社会だけど、せっかく大学に通っているのだから、いろんなことに対して意見を持ち発信するようになってほしい。だから僕の授業を「堀江道場」として、自己発信の練習をする場にしてほしい。

 「堀江道場」では、質問したら1点、自分の意見を言ったら3点、プレゼンをしたら5点をつける。すでに30点くらい取っている人もいる。このように発信力を稽古して磨いていくことによって、自分を強くして国際的にも通用する人間になっていく。

 情報発信のためのコミュニケーション能力がないと国際的に見るとゼロで、英語ができたとしてもそれだけでは自分の意見がなければ存在しないのと同じ。日本企業だろうが研究所だろうが、どこにいくにしてもそうした能力を強くしておくことがどこでも通用できる人材に繋がると思う。だから僕はそのお手伝いを授業でやっている。意見は人と違って良いのであって、自分の意見を持つこと、自分としてのあり方、個の確立をしてほしい。

—明治大学の国際化については、どのように評価していますか?

 明治大学は素晴らしいと思う。すでに数百校との連携協定ができていて、留学へ行ったり、留学生を受け入れたり。だからグローバル30が日本でできた時、日本で13しか選ばれなかった大学の中にちゃんと明治大学が入っている。そのあともスーパーグローバル大学などにも、継続的に明治大学はずっと選ばれ続けている。これは、明治大学がやってきたことがしっかりと評価された証拠。明治大学のレベルが高いからこそ、国が後押ししてくれている。これは、素晴らしいことだと考えます。

※堀江先生の授業紹介:

共通総合講座「役に立つ世界情勢の読み方」

…駿河台キャンパス堀江先生だけでなく、外務省の高官やNGOの代表、教授やコンサルタントを毎回ゲストスピーカーとして招いて、世界で起こっている問題やそれに対する日本の取り組み、外交交渉などについて講義を受けることができる。授業の冒頭では自由なテーマでプレゼンを行える機会があり、また授業終盤にはその日の講義に関しての質問や意見を挙手して発言する時間がある。授業後のお昼休みには堀江先生のラウンジに自由に集まり、昼食をとりながらその日のゲストスピーカーや他の学生とお話ができる場が設けられている。授業外の時間に外務省へ訪問する機会があるなど、貴重な体験ができて楽しいのでおすすめの講義。でも堀江先生のスケジュール上、残念ながら前期にしか開講されないので取り逃がさないよう

に!

いかがでしたか?学部の教授でなく、共通総合講座の先生として活躍される堀江先生のお話でした。コミュニケーションを大事にされる姿勢が素晴らしいですね。

次回もお楽しみに!


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