「グローバル30」?「SGU」?明治大学が国際化に進む理由【教職員インタビュー第3弾 武田巧教授 Part2】
、グローバル30に選ばれる
国際化、学部間格差に苦しむ
明治の国際化、他大と比べると…?
もっと使って!留学=夢へのブースター!
1 明治、グローバル30に選ばれる
中山:さて、前回は先生自身の留学についてお話を頂きました。今回は、明治大学の国際化についての現状や留学に対する先生のご意見を伺っていきます。まず、先生は国際交流委員会の委員長をされているということで、この委員会の発足のお話などからお聞きしたいです。
武田:はい。国際交流委員会というのが政治経済学部(以下政経)にあってその委員長をやっています。委員長は2012年からやっています。それと2013年から学部の教務主任をしていて、主担当は国際交流。とにかく2012年からずっとこの仕事をやっています。
中:学部以外にも、今は国際連携本部というのもありますが、できたきっかけはありますか?
武:「グローバル30[i]」って知っていますか?文部科学省が日本の大学にもっと国際化せよっていうことで日本の中の30大学を国際化の拠点として選ぼうとした。結局、予算の問題もあって選ばれたのは13大学。国立7大学と、私立は6大学。西日本は同志社と立命館、東日本は早稲田、慶応、上智、そして明治。立教もICUは選ばれてない。
中:私立の早慶上智に並ぶんですか!明治大学、そんなに評価があったとは知らなかったです(笑)。どれくらい前の話ですか?
武:採択が2009年かな。それがあって大学側も国際化を進めていかないといけない、となったのかな。国際連携は新しい組織で、設立は2009年10月。2007年に学部では国際交流委員会っていうのを作り、私は3代目の委員長。
中:グローバル30に選ばれてから、明治大学の国際化が進んだってことですかね。それ以前から明治大学は他の大学より進んでいたっていうことはありましたか?
武:2009年にグローバル30に選ばれたっていうのは当時学部の国際化を担っていた大六野先生[ii]にとっては当然のことだと思われたかもしれないけど、私にとっては驚きでしたよ。明治大学が?って。でも文科省にとって、明治大学のように人数の多い大学が国際化を推進するっていうのはとても大きな意味のあることなのではないですか。明治大学は国際化が遅れていたわけでもなかったので。戦前も中国やベトナムから優秀な留学生が来ていてね。戦後はアメリカの日系人がけっこう来ていました。明治にESSという英語部があってそこでいろんな指導をしてくれてね。そのあとは一時期ドメスティックな感じだったかもしれないけど、2000年を越えたあたりから文科省が国際化に力を入れ始めて、2009年に明治大学がグローバル30に選ばれて、政経がGGJ[iii]っていうプログラムにも採択されたりもして、今度はスーパーグローバル[iv]に採択されるでしょ。お金もある程度入ってきてグローバル化も進んだ。2017年度の受け入れは2000名を超えたし、送り出しも1800名を超えた。スーパーグローバルとしての目標は受け入れ・送り出しともに4000名なんだけど、だいぶ近づけてきているんじゃないかな。
2 国際化、学部間格差に苦しむ
中:なるほど。文部科学省からの助成金もありつつ、明治大学にグローバル化は進んできたんですね。ところで、実は私MuBOの活動をしていて強く思うことがあります。それは、学部間でグローバル化の進み具合がかなり違う…?ということなんですが。
武:学部の熱意に差があるんじゃないかな。政経は、大六野先生が学部長時代にブルドーザー役を果たしたから、上手くいっているのかな。自分としても留学はやりたい分野だったので。あとは、政経は学部間の協定をたくさん持っていることもあるかな。
中:はい、数えた限りでは政経には31校も協定校があって。国際日本学部の21校よりも多かったですね。
武:政経は年間で40プログラムが動いています。しかも、学部で受け入れの状況もだいぶ違うよ。母語以外に英語しかできない学生も政経は受け入れている。そんな学生を受け入れているのはあと国際日本学部と、人数を制限しているけれど経営学部くらいかな。留学の日本人送り出しに関しても、留学先の単位を明治大学に互換できないとかもある。政経はだいぶ認めているけどね。
中:はい。政経の私は、留学先の28単位がそのまま28単位として登録されました。ちなみに、法学部は学ぶ内容が現地の法律、ということもあって単位互換が難しいなんてことも聞きます。そんな話を聞くと、個人的にはもっと他学部でも留学制度を充実させてあげたい!って思うんですけどね。
武:案として、4000人を目標とするなら、学部ごとに留学生の送り出し・受け入れ人数枠を振り分けたら良と思うけどね。他の学部に言っても拒否されちゃって難しい。ただ、いろんな機会を提供でき始めてはいるよ。だいぶ留学に行きやすくはなっているのではないかな。
中:はい。私も今4年生ですが、入学当初から比べて留学先、留学形態、奨学金などどんどん増えていて羨ましい限りですよ。
3 明治の国際化、他大と比べると…?
ではここまでは明治学内の国際化の流れについて聞いてきたので、次は明治大学と他の大学を比べての国際化状況についてのお考えを聞いていきます。大六野先生の話を聞いていると明治大学は他大学よりも、どんどん国際化していると仰っていますが、実際のところランキングを見るとやはり早稲田が上にいたりするんですが…。
武:国際化だけでランキングをつけているわけではないだろうけど、それは気になるよね。
中:やはり、名のある大学を抜かす、ということは難しいのでしょうか。
武:明治の国際化が他より進みにくい理由の一つとしては、やはり学内の抵抗があると思うよ。例えば、英語の授業を増やそうと提案しても、他の教授から「負担が増えてしまうから…」と言われることもあり、なかなか難しいね。でも、大学全体では695もの英語での授業があるんだけどね。
中:なるほど。国際化に向かうにしても、すでにある学内の風潮を変えるのには時間がかかる、といったところですかね。
武:それでも、やはり明治の国際化は確実に進んでいます。2012年に国際交流委員長になって当時は富士山1合目だったけど、今は3合目、そろそろ4合目かな〜なんて思っているよ。まだまだだけどね。
中:3年後、5年後にはもっと明治大学の中で英語・留学が当たり前になると良いですね。
武:EUからイギリスが抜けるとしても、英語はEUの公的言語としてまかり通ってしまう。だから英語を使う使わないはもはや選択の問題ではなく、受け容れるべき事実でしかない。ドイツの大学院なんかもほとんどが英語の講義。どんどんいろんな国から人を集めている。そういったことを我々もやらないといけないだろうね。そういった意味ではまだまだ先は長いね。やはり、大規模の大学でプログラムを作っていくのは難しいけど、うちがやれば、日本の全大学にとって大きな意味があるよね。明治とか早稲田とか、大きな規模の大学でやる、ということが重要なんじゃないかな。
中:学生数は、明治で3万人、早稲田で4万人を超えていますものね。
4 もっと使って!留学=夢へのブースター!
中:では、そろそろ最後になるので、武田先生から明治大学が国際化するにあたって、今後の展望を教えていただけますか。
武:まずは学生に対して一言。これだけ留学の機会を提供しているのだから、利用してほしい。応募がないプログラムがまだまだある。今回も短期の夏期プログラムがたくさんあるけど、応募者のほとんどが1年生と2年生。4年生は就活で忙しいとは思うけど、3年生の応募も少なくて。
中:最近は、3年生でインターンシップをやるトレンドがありますからね。
武:だから、長期留学も3年生になると申し込まなくなっちゃう。でもさ、留学の経験ってインターンシップの経験よりも素晴らしいと思うんだよね。日本じゃ経験することのできない経験をすることができて、それは皆さんの人生に物凄くプラスになると思う。その経験は、皆さんの人生を大きく変えたり、夢に向かってのブースター…この言葉良いね!夢に向かってのブースターに繋がったりする。
中:名言がでましたね。留学=夢に向かうためのブースター!(笑)
武:そう思うんだよ。にもかかわらず、目の前のインターンシップにただ行くのは違うんじゃないかなって皆に言いたい。卒業が遅れてしまうのだって全然心配いらない。絶対にキャリアにプラスになるのに、そこに挑戦しないでインターンシップ…というのもなんだか。
中:今は、就職活動の情報としてインターンシップが内定への近道になったり、いつまで売り手市場か分からないなど不安も多いですからね。
武:心配するのは分かるけど、やっぱり留学に行って戻ってきた学生の方がよっぽど良いと思う。自分を高めたいならやっぱり留学。だってインターンシップでやることなんて企業に入れば分かることでしょ。インターンシップではできない、日本の中では経験できないような経験をする方が自分自身を変えられるし大きくすることもできる。キャリアとはなんだろうって考えて自分の決めた選択をすることにもつながる。だったら3年で留学に行けよって思うね。ここを強調したいね!
中:確かに、私が入学したときは3年生で留学に行かれている方が多いイメージでした。今はあまり聞かないですよね。
武:蛇足だけど、私の時代の就職活動は4年の10月から解禁だったよ。そこで初めて考え出す。インターンシップなんてなかった。学生は、就活に縛られている人が多い気がするね。卒業を遅らせる話も、私は2大学に通ったから、卒業に6年かかっていますからね。
中:なるほど。今は就職活動が学生生活の半分以上を占めてしまう現状が、留学への足枷となっている可能性も大きそうですね。就職活動を通して、自分の道が見えればいいですけど。人生を決めるのに使える大学4年間のモラトリアムは、大事に使って行きたいですね。
みなさん、いかがだったでしょうか。明治大学は、今も国際化に向けて走り続けています。制度を利用するもしないもあなた次第。自分の未来を考えるためにも、明治大学国際化の流れを使って留学するのもありなのでは?
次回は、今回お話にも出てきた明治大学副学長、大六野耕作先生にインタビューです。どんなお話が聞けるのか。お楽しみに!!
[i] 留学生などに魅力的な教育を提供し、留学生と切磋琢磨する中で国際的に活躍できる人材の養成を図るため、海外の学生が日本に留学しやすい環境を提供することを目的として行う取り組み。(文部科学省より)
[ii] 明治大学副学長、政治経済学部教授。明治大学の国際化に向けて活動する第一人者でもある。
[iii] Go Global Japanの略。
[iv]Super Global University(SGU)
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